「お話2」

ベートーベンの<第九交響曲>の初演は1824年5月7日ヴィーンで行われた。
リハーサルは2回しか行われなかったが(作曲者がそれに抗議すると、これで充分です、
という答えが帰ってきた)これは例を見ないほどの大成功であった。
「街角のに貼りだされたポスターにはこう書いてあった。

「イグナツ・シュパンツィヒ氏がオーケストラを指揮し、演奏の総指揮はミヒャエル・ウムラウフ
氏が行う。ルートヴッヒ・ヴァン・ベートーベン氏はそれに参与する」

しかし実際には、耳の聞こえないベートーヴェンが燕尾服に黒い絹の半ズボンと黒いストッキング
でオーケストラの前に立って、タクトを振ると、その後ろに立っているウムラウフが実際の指揮を
し、出演者のすべての目はそのとおりに向けられていたのである。

最後のニ長調の和音が消えるやいなや、いまだかつて聞かれたことのないような拍手と歓呼の嵐
がまきおこり、歌手とオーケストラも進んでその中に加わった。会場を満たしている歓声に
気がついていないのは、ベートーベンだけであった。彼には何も聞こえなかったのであった。

そのときカロリーネ・ウンガーが歩み寄って、せめてその熱狂ぶりを目で見ることができるよう
に、後ろを振り向かせた。ベートーベンはしばらく歓呼する聴衆をみていたが、それから深く
頭をさげて挨拶をし、壇上を去った。

「鍵穴から見た、大音楽家より」

「お話1」
超越した即興演奏でその当時のピアニストを端から打ち負かしたといわれる
20代から30代にかけてのベートーベン

当時のピアニストは、即興演奏(今のクラシックの世界ではほとんど死語になっているが)
ができないピアニストはピアニストとしては認めてもらえなかったらしい。
これは当然だと思う だって音楽家なのだから。
現代では、ジャズ、ロックの世界では当たり前だったが、最近ではロックもまた
即興演奏からは遠退いてきている傾向がある。

当時のウイーンには、常時150人以上のピアニストが、ひしめいていたと
いわれ お遊び好きな 貴族の間では格好のエサになったのだろう
当然どちらが、勝つかという賭けの対象にもなっていたらしい。
中世日本の剣豪たちの果し合いと似ていると思う。
領主によって仕掛けられた、試合によって名を上げようと 京都にひしめきあって
いた時代だ。

話を戻そう ベートーベンについては、面白いエピソードがある
1796年ベルリンでヒンメル(宮廷楽長ピアニスト)と戦ったときのの話です。
場所はあるコーヒー店 まずベートーベンが即興演奏を行い
次にヒンメルの番になった。
彼がひとしきり弾いて休止をいれたときのことである、この瞬間をまっていた
ベートーベンは、皮肉をいうときに間を外さない絶妙のタイミングで言った
「本番はいつからですか?」と

ヒンメルが怒りだしたのは、云うまでも無い

これには後日談があって、表向き和解したあと、ヒンメルが送った手紙の中に
「最近盲人用のカンテラが発明されたそうですよ」
本気にしたベートーベンが友人たちに報告して大笑いされたらしい

ベートーベンの演奏方法として特徴的なのは、色々な研究がされて
いるだろうが、ロック的考えかたから意見を述べさせてもらうと
師がオルガン奏者だったことから、レガートを強調した、
いやらしい演奏方法ではなかったのではないだろうか
もちろん、彼が天才だったことは当然だが、
即興演奏といっても、無の中からいきなり弾くわけではなく
最初にモチーフ及びテーマが決まっており、そのモチーフにそって
即興を行うものであるが、ロック、ジャズ音楽でいう、コード進行形式(T、W、X)
などと同じようなものだ。

一昔前のロックなどでは、ジャムセッションと呼ばれる演奏形式がとられ
メンバーが集まり、キー(調)を決め、何々風で行って見ましょうと言われるだけで
始まってしまう。この何々風というのがクセモノで、何々を知らない場合が
大変で、決まったキーと初めて聴く曲の流れを把握し、いかにも知っていたと
ばかりに、ニコニコしながら引きつった顔などいっさい見せないで演奏するのだ。
どれだけ 音楽を聴いているかだけが問われる世界である。
という事で、負け知らずのベートーベンの事だ、
戦いの前に、テーマを入手していた可能性も高い
例によって貴族の御令嬢に巧くとりいって・・・・

しかしながら 演奏技術も高かったことは確かです
ここで、入手できる彼の音楽でそのあたりを垣間見ることのできる
CDを紹介します。こちらからどうぞ!!
なによりも即興演奏で大事な事は聞くことです。

現在のクラシックミュージシャンの多くは(特に日本では)聴くことを
あまりしないのです。
即興ができないのは、スケールの練習が少ないという方とかいるのです。
バカなこといってはいけません。
ロックの有名な音楽家の半数以上、スケールなど知りません。
気にしてないでしょう。たぶんスケール練習などしたことは無いと思います。
知ってれば、便利なのも確かですが、思うように弾けなくなるのも確かです。

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Ludwig van Beethoven(1770-1827)